5万円で20㎝Wウーファーホーンスピーカーを自作【2/2】
ホーンスピーカーで特に問題になるのが、中域のドライバーと低域のウーファーとの位置のずれ(位相のずれ)です。ユニットの位置が揃っていないと、聴取位置で音の到達時間にずれが生じます。
波長が1/2ずれると、180度のずれとなり位相が反転して音を打ち消しあいます。
今回、使用するネットワークの低域と中域のクロスオーバーは『900㎐』。中域と高域のクロスオーバーは『9k㎐』です。ツイーターのクロスオーバー9k㎐の波長の長さは3.8㎝でこの場合、½ 波長分の1.9㎝ずれると、180度の位相ずれとなり反転し音を打ち消しあいます。
低域と中域のクロスオーバー900㎐の波長の長さは38㎝です。この場合、低域と中域が½ 波長分の19㎝ずれると180度ずれとなり位相反転し音を打ち消しあいます。低域と中域の位置ずれの最大許容を、½ 波長分の19㎝までとして低域と中域のユニットを出来るだけ近づけます。
中域のドライバー『ED3402』と、低域のウーファー『DC200-8』のボイスコイルの位置を完全に一致させるとホーンが箱から飛び出してとても不格好です。
見た目のデザインも考慮しながら、位相ずれの影響を最小限にするためのタイムアライメント調整用のアダプターを、3DプリンターEnder 3 Proで製作します。
まず計測して、ウーファー『DC200-8』のボイスコイルの位置を調べます。
ドライバー『ED3402』のボイスコイルの位置は、ここです。
モデルを計測したら、いつものようにFusion360でモデリングしてウーファーとドライバーの適切な位置をシミュレーションします。見た目のデザインのバランスを考慮しつつ、ウーファーとドライバーのボイスコイルの位置をできるだけ近づけます。最終的には、『タイムアライメント調整用アダプター』の厚さを2㎝にしてホーン前面はエンクロージャーから2㎝突き出す形にしました。ウーファーとドライバーのボイスコイルの距離は5㎝になりました。
900㎐の波長の長さが【38㎝】、位相反転になる距離が½波長分の【19㎝】です。【5㎝】は、½波長分19㎝の約1/4でしかないので、位相ズレの悪影響を減少できます。
アダプターの完成後に【仮想音源方式】という素晴らしい情報を見つけました。ウッドホーン工房の『リューズテクニカ』さんのサイトの記事にホーンスピーカーの位相合わせに関して以下のような内容の記事がありました。
参考:リューズテクニカさんのサイト記事より
この仮想音源方式を説明すると下の図のようになります。
仮想音源方式を、このスピーカーに当てはめると中域と低域の仮想音源の位置が、ほぼ一致していました。
結果オーライですが、自作のアダプターを使えば、位相ずれの問題がほぼ解消される事が、この『仮想音源方式』で確認出来ました。
ホーンとドライバーの取り付けには、問題が一つあります。ホーンのボルト穴が4穴、ドライバーは3穴で、ネジ穴のピッチ寸法も異なります。
このままだと、ドライバーにホーンを取付られないので3Dプリンターで、アダプターを製作しました。
自作のアダプターを介して、ドライバーにホーンを取付けます。オーディオ人生初の『コンプレッションドライバー+ホーン』です。この佇まいを見てるだけでワクワクします。
必要なパーツが全て揃ったので組み立てていきます。これは3Dプリンターで製作した、タイムアライメント調整用のアダプターです。裏には共振防止と空気漏れ防止のため、ゴムシートを貼りました。
ドライバーが入らないため、開口部の中央を彫刻刀で少し削りました。
アダプターを箱に取り付けます。
ホーンの裏側にも共振防止のため、モノタロウの防振ゴムシートを貼りました。
このアダプターに、ホーンを取り付けます。特に違和感なく箱に収まりました。
ホーンの裏側です。
購入したサイトが英語で分からなかったのですが、届いたウーファー『Dayton Audio DC200-8』を見てみると高級モデルのスピーカーで使用される【ノンプレスコーン】のようです。ノンプレスコーン】は、「軽量」で「高剛性」、「内部ロス」が大きく特に、低域再生に優れているといわれています。
早速、JBL『SV800』に取り付けます。内部配線は、ベルデン8470です。
コンプレッションドライバーに続きこれも“オーディオ人生初”の20㎝Wウーファーです。小口径フルレンジばかり使ってきたので、間近で見ると迫力があります。
コンプレッションドライバーの能率が98㏈と高く、他のユニットとバランスをとるため、中域にはFostexのアッテネーター『R80B』を使用します。
左側がアッテネーターなし、右側がアッテネーターありの場合のチャートです。アッテネータで調整しないと、高域側が不自然に高く盛り上がります。ウーファーを正相、中域のコンプレッションドライバーは逆相にして中域に、アッテネーターを使い音圧を調整します。
ネットワークとアッテネーターは、エンクロージャー内部に取り付けます。このエンクロージャーはホーン側の裏板が、取り外せるようになっています。
この裏板に、ネットワークとアッテネーターを取り付けました。
ウーファーとドライバーの間は、分厚い吸音材で仕切られているのでここにネットワークを取り付ければ、エンクロージャーの内圧の影響も少なそうです。
板に穴をあけ、アッテネーターを取付け、ツイーター用の配線を通します。
ドライバーとアッテネーターの配線だけ、手元に余っていた純銀線を使用しました。
ネットワークのプリント基盤は、シリコン製のスペーサー を間に入れ箱の振動がネットワークに伝わらないようにしました。
配線も最短距離で、無駄なくすっきり収まりました。
裏板をボルトで閉じてネットワークの完成です。
ケーブルの末端は、ニチフの圧着端子でカシメてボルトでターミナルに取り付けます。
3Dプリンターで自作したターミナルプレート。
パーツ探しに半年以上かかりましたが、組み立ては半日で終わりました。
当初、バスレフで聞いていましたが、ボリュームを上げると部屋が揺れます!流石にこれでは音楽を楽しめないので、吸音材でポートを埋めて密閉型にしました。
バスレフと密閉でスピーカーを測定した比較測定チャートです。赤線がバスレフ、青線がダクトポートを埋めて密閉型にしたものです。
100㎐の大きく盛り上がった山が小さくなり、最大で6㏈以上も音圧が下がりました。ポートを塞いで密閉にしたことで、さらに低域の解像度もグッと上がりました。
ドライバーの能率が他と比べ高いため、中域だけに付けたアッテネーター。レベルは試聴と測定結果から「5」に設定しました。
次回は、ホーンツイーターとフロントグリル製作です。
このスピーカーの再生音は、こちらの動画でご視聴ください。