ハイエンドスピーカーを自作! 音工房Z 『Z701-OMMF4』改造【2/2】
内部配線は、キットのではなく『ベルデン8470』を使用。ターミナルプレートは3DプリンターEnder 3 Proで自作しました。
ターミナル端子は、ユニット交換が容易にできるように、ネジ止めタイプにしました。
端末処理は、ニチフのY型圧着端子を使用しました。ツイーターのコンデンサー(1.0uF)は、スリーブで圧着後に絶縁テープを巻きます。
二つの『OMMF4』の配線は+端子、-端子をそれぞれ並列で圧着端子にカシメます。
このように、フルレンジとツイーターの圧着端子をネジとナットで固定します。+、-端子を間違えていますが取り付ける時に気が付いたので、正しい配線に直しました。
ツイーターは、『Dayton Audio AMT Mini-8 エア・モーション ツィーター』を使用します。ツイーター上下のボルト2本を外し、キット付属のビスでバッフルに取り付けます。
ツイーターの裏の端子側は、空気漏れを防ぐためグルーガンですき間を埋めます。
ターミナルプレートを背板の孔に付属のビスで取り付けます。
付属のダクトを6㎝にカットして、マスキングテープを巻きポートにはめ込みます。
念のため、バッフルの裏に空気漏れ防止のテープを貼っておきます。
ツイーターは逆相で取付けます。
バッフルをボルトで取り付けます。ボルトを目立たなくするのは無理なので、3DプリンターEnder 3 Proで製作したリングで、敢えて見せるデザインにしました。
ユニットを取付けて完成!! ・・・ではなく
こんな20ℓもある、でかいスピーカーをデスクトップで使う人はいないと思いますが私は、これをデスクトップスピーカーとしてニアフィールドで使います。
ニアフィールドで使う場合、一つ気になる問題があります。
フルレンジ1発に比べ、ユニットが3つあるヴァーチカルツインは音源が大きくなり、低位が悪くなります。
上下のユニットを、耳の方を向くように5度傾けました。そこで、ユニットに角度を付けて音源を小さくするためのサブバッフルを、3DプリンターEnder 3 Proで製作しました。
このサブバッフルの狙いを図に表すと、上のようになります。平面のユニットから音がストレートに放射されると、音源が大きくなり定位も悪くなります。
ユニットに角度を付けて、音を耳に向ければ音源が小さくなり、定位も良くなります。実際に、この通りになるか分かりませんが、試作品を作って試してみました。
ツイーターが、耳と同じ高さにスピーカーをセットしてユニットの角度を割り出します。リスニングポジションは80㎝。床からの耳の高さが105㎝。Fusion 360でスピーカーと机をモデリングして、ユニットの角度をシミュレーションしました。ツイーターと耳の位置を直線上で結んだ、黄色い破線を基準にしてユニットの角度を決めます。
上下のユニットが、耳の位置に対して垂直になるように角度を付けます。リスニングポジションの位置で、交差するユニットの角度は約5度です。
頭の位置は一定では無いので、前後頭一つ分ずらした角度も計測します。頭一つ分下がった位置で、耳の位置で交差するユニットの角度は約3.5度です。
頭一つ分前のリスニングポジションで、耳の位置で交差するユニットの角度は約7度です。
この三つの角度で、3Dプリンターで試作品を製作しました。実際に測定して、最も周波数特性が良いものを採用します。
試作で、3.5度・5度・7度を製作しましたが7度は干渉して取付できなかったので、測定できませんでした。
5度のサブバッフルで取り付けた背面です。端子と孔の隙間が狭かったので彫刻刀で削りました。孔を1㎝程度面取りしたほうがよさそうですがトリマーは持っていないのでヤスリで軽く面を取りました。これだけ隙間が少なくなると、低域の再生周波数特性に影響が出そうですが、それも測定して確認します。
まず最初に、サブバッフルなしを測定した結果です。20㎐~40k㎐(-10㏈)のビープ音を、ツイーター軸上80㎝で、測定しました。40㎐~20k㎐まで、 -20㏈より上にチャート線があり大きなピークやディップもなくほぼフラットです。
続いて、サブバッフル有と無しの比較です。上が『サブバッフル無しと3.5度』の比較、下が『サブバッフル無しと5度』の比較です。どちらもサブバッフル無しよりもサブバッフル有の方が、全体的に音圧が高いです。300㎐以下の低い帯域では、ほとんど差がありません。ユニット背面側と孔のすき間が狭く、低域の再生周波数に悪影響があるかと思いましたが、それは無いようです。耳に聞こえにくい帯域ですが、16k㎐~22k㎐付近でサブバッフル有の方が6~8㏈以上も高いです。周波数特性が劣化せずむしろ音圧が全体的にアップしているのでサブバッフルを使う価値は十分にありそうです。
最後にサブバッフル同士の比較です。僅かですが3.5度よりも5度の方が、音圧が高く、より平坦に近いです。これらの測定の結果、5度の角度のサブバッフルを使うことに決めました。
最終的にサブバッフルの完成品は、シルバーとブラックのツートンカラーにしました。光の反射具合では、シルバーのPLA(素材)が金属のように見えて、精悍で高級感がグッと増します。
パーツを分けてプリントし、アクリルサンデーというプラスチック用の接着剤で接着します。ユニットを取付ける部分と、外枠部分は色だけではなく内部構造も変えてあります。
スライサーソフトでは、内部構造の形状や密度を設定で色々変えることが出来ます。
共振と不要な付帯音を、少しでも減らすため各パーツで異なった内部構造にしました。ユニットを取付けるパーツの内部構造は、『キュービック状』にしました。
ユニットを装着し、バッフルに取り付けます。各ユニット間に、共振防止のため2㎜のスリットを設けています。
そして完成です。
サブバッフル無しの状態で、1週間ぐらい『Z701-OMMF4』を使いましたが、このままでも十分にニアフィールドで使用できるほど、音像定位が良いです。ただ、サブバッフル無しだと、わずかに音像の中心が、目線の上にあり5度のサブバッフルを付けると、音像の中心が丁度、目線と同じになります。つまりその分、音像が小さくなり定位が良くなっているのでサブバッフルを使う効果はありますがその差は僅かで、音質の差は全く分かりませんでした。
これまで、ペア1万円以下~1.5万円程度の安価な自作スピーカーを使用してきましたが、今回の『Z701-OMMF4 (改造) 』との最大の違いは【低域の解像度・表現力】です。これはもう圧倒的に違います。今まで聞いていた音がラジカセの音に思えるぐらいの差です。【低域の解像度・表現力】が良くなると、音の品位も一気に向上しました。スピーカーの基本的な音色は、高域で決まりますが、音の品位は【低域の解像度・表現力】が重要のようです。【低域の再生能力】は、ユニットの性能だけではなくエンクロージャーの材質や構造そして特にサイズが大きく影響します。高域の楽曲ソースだけで、比較したら安価なスピーカーがハイエンドと同等のケースもあると思いますが、 【低域の再生能力】で安価なスピーカーがハイエンドと同等以上になることは物理的に不可能でしょう。
このスピーカーの再生音は、こちらの動画でご視聴ください。